夕張メロン ~ 概歴的なお話 vol.3 ~

今では全国的に有名になり、確固たるブランドを築き上げた「夕張メロン」。
しかし、1960年にはじめて東京の青果市場に運ばれた夕張メロンは全くの不評だったそうです。
当時の仲買人たちは赤肉のメロンなんて馴染みがなかったので、カボチャメロンだと馬鹿にされ静岡産青肉メロンの半値以下で買いたたかれたそうです。

価格を聞いて落ち込んだでしょうが、味に自信のある農協の関係者や生産者たちは、めげずに販促にはげみました。
銀座の歩行者天国で試食してもらったり、百貨店や果物屋さんを訪問したそうです。
やがて、消費者の反応も少しずつ増えていき、味の良さは口コミで広まっていきます。
マスコミにも取り上げ、市場関係者にも認知され評価が確立したのが昭和50年頃だそうです。
夕張メロン誕生から15年ほどが過ぎていました。

ご存知のように夕張は炭鉱の町として発展しました。
そのような土地柄では行政も炭鉱一辺倒で、農業振興など真剣に考えることもない時代が長かったそうです。

「夕張は炭鉱が無くなったから、メロンを作った…」。そんなイメージを持っている方も多いと思いますが、炭鉱とメロンはまったく独立した歩みです。メロン農家は、生産が軌道に乗るまで国の補助金などの援助はほとんど無く頑張ってきたそうです。

現在では「JA夕張市」の総販売額の9割以上を夕張メロンが占めているそうですが、なぜ夕張メロンは全国区と成れたのでしょうか。もちろん味や触感が良くなければ売れるはずもありませんが、その他にも秘密はあるようです。

まず一つ目は偶然なのか必然だったのか、最初にできたメロンが優秀だったということです。
さらなる品種改良は20年くらい前から取り組んでいるそうで、外観上は良くても食味で夕張キングを上回るものができないそうです。
果肉の色もそうです。それまでの常識には無かったオレンジ色です。青肉のイメージでメロンを切ると見たこともない赤肉が…。これは消費者にとってかなりのインパクトがあったことでしょう。

次に気候風土があります。
夕張は年間平均気温が低く昼夜の温度差も大きい。さらに土壌は火山灰地で栄養分は少ないものの水はけが良い…。ま、今考えればメロン栽培の最適地ですね。
労働力も近隣に大きな炭鉱があるのですから、農繁期には炭鉱の「母さん方が出面さん(主婦パート)」として働いたことでしょう。

最大のビジネスモデルとしては、日持ちしない欠点があるが故に生まれた仕組みがあります。

収穫後3~4日で熟れてしまうため、当初の商圏は札幌や旭川が限界だったようです。首都圏へ鉄道・連絡船で運んでいては腐ってしまいます。
そうなると最もコストのかかる空輸しかありません。売れ残れば大赤字になってしまうリスクがありますが、収穫した日に築地に届くという魅力が勝りました。

夕張メロンの人気は高まり、やがて首都圏のデパートでは夏ギフト・お中元商品としても取り扱うことになります。
しかし、北海道→東京のデパート→顧客へ配送。こんなことをしていては腐ったメロンが届く可能性がかなり高くなるのは明らかです。

そこで提案したのは、「産地からお客様へと直接送る方法はいかがでしょうか」。
当時の商慣習として、デパートとしてはあくまでも商品を確認してからではないと大切なお客様にお届けはできないということでした。もし、結果として粗悪なものが届いたとしたら、デパートは信用も顧客も失いかねませんから当然の対応でしょう。つまりは信用不足なのですが、この企画を成功させるにはこの方法以外は考えられません。

デパートの信頼を得るために農協が行動を起こします。
「夕張メロン」がどれほど厳しい管理のもとに出荷しているかを見てもらおうと考えたのです。

昭和53年5月14日、デパートの担当者たちが夕張のメロン選果場を訪ねます。
検査が始まりました。ベルトコンベアの上の箱に入った夕張メロンはどれも見事なメロンばかりです。
検査員が箱の中から1玉を手に取り包丁を入れました。担当者たちは味でも見るのかと思ったことでしょう。

しかし、形…、大きさ…、重さ…、ネット不足…、熟れすぎ…、熟れ不足…、糖度…。。。
次から次へと包丁が入れられ、わずかでも基準に満たないメロンの山が出来ていきます。

デパートの担当者たちは目を疑ったことでしょう。
何が行われているのか…。これが出荷前の選別作業なのか…。

今、自分が見ている光景が、この厳しく大きな壁を超えて出荷されるのが「夕張メロン」なのだと再認識しました。
これなら間違いのない商品をお客さまに直接届けられると、今日では当たり前ですが当時は前代未聞のシステムである日本初の「産地直送」がスタートしたのが昭和54年のことでした。

その後はさらに人気も値段も鰻上りで、「夕張メロン」は超高級メロンとしてのブランドになるのです。

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