北海道博物館 vol.3 「志海苔古銭」



昭和43年7月16日、函館の海岸近くから多量の古銭が発見されたという。
場所は現在の国道278号線、志海苔漁港に近い場所で、道路改良工事を行っていた加藤組が、旧道の掘削中に大きな甕に入った古銭を発見。

実はこの場所は北海道でも最も古い歴史のあるエリアです。

鎌倉時代から戦国時代にかけて出羽国(現:秋田県)・陸奥国(現:青森県)北部と蝦夷地南部に勢力を振るっていた「安東氏」が築いた12の館(たて)がありました。
このエリアには「志苔館」が14世紀後期に安東氏の配下の豪族だった小林氏により築かれ、約100年間交易や領地支配の拠点にしていたとされています。

江戸時代に書かれた松前藩の史書「新羅之(しんらの)記録」によると、1457年の「コシャマインの戦い」でアイヌ民族に攻め落とされ、再び小林氏が居住するものの1512年にもアイヌの蜂起があり館が陥落し廃館になったとされています。

志苔館跡は、函館市の中心部から東へ約9キロの海岸沿いを走る国道278号から北へ坂道を上った海抜25メートルの海岸段丘の上にあり、「しのり」という地名は南北朝時代以前から古文書にもあり、志海苔のほかに志苔・志濃里・志法とも記されているそうです。

17010602.jpg

さて、発見された甕(カメ)に詰められた古銭ですが、その数はなんと38万枚、総重量は1.6t。
主に中世に国内で流通していた渡来銅貨だそうですが、1ヶ所から発見された古銭としては国内最大の量で、「志海苔(しのり)出土銭」として国の重要文化財に指定されています。

甕は全部で3個発見されていて、その大きさは1と2号甕は口径約60cmで高さ約80cmの大甕。3号甕は破損し底を残すのみで1・2号甕より小さい。
その1・2号甕は福井県の越前古窯のもので、ひびの入った部分に平織りの布を当て黒漆で固めてある室町時代前期に作られた甕で、3号甕は石川県能登半島で生産された珠洲窯第Ⅲ期、室町時代前期から中期の大甕。

甕は現在の海岸線にほぼ平行に5m間隔に並んでいて、砂層に穴を掘り粘土やこぶし大の石が詰められ、覆っていた土の厚さは50cm程度。お宝を埋めたとしては浅い感じがしますね。ひょっとして急を要していたのでしょうか。

17010603.jpg

古銭は1・2号甕に37万7,449枚、3号甕に6万6,987枚。合計だ37万4,000枚以上。
銭の種類は94種類で不明銭が1万枚以上あるものの、最も多いのが北宋銭の88.1パーセント。古い年代の銭貸名としては前漢の四銖(しゅ)半両・五銖・新の貨泉・唐の開元通宝・乾元重宝で、日本の皇朝銭の和銅開弥(飛鳥)・万年通宝(奈良)・神功開宝(奈良)・隆平永宝(平安)・富寿神宝(平安)・承和昌宝(平安)・貞観永宝(平安)・延喜通宝(平安)が12種の中の8種で、飛鳥から平安のものが含まれているそうです。

北宋銭で多いのが、皇宋通宝4万7,031枚・元豊通宝4万3,009枚・寧(きねい)元宝3万4,897枚・元祐通宝3万3,904枚・天聖元宝1万7,924枚など、同一銭貨で1万枚以上のものが9種類。
年代の新しいものとしては、明の大中通宝1枚・洪武通宝12枚。中国各地で造られた唐の武徳4(621)年に初鋳された開元通宝は、志海苔からは鋳造地の大半である16か所のものが出土、南宋の古銭は鋳造年を背に刻したほとんどが、中国周辺の貨幣としては安南の太平興宝・天福鎮宝、遼の清寧通宝・咸雍通宝・大康通宝、高麗の東国通宝・東国重宝・海東通宝・海東重宝・三韓通宝・三韓重宝、金の正隆元宝・大定通宝、西夏の天盛元宝。その他として。和鋳銭、厭勝(ようしょう、まじない)銭、加工銭。

17010604.jpg

志海苔古銭は、出土した量も多く、種類も北宋銭を主としながら前漢から明初・皇朝銭や中国周辺の銭貨が含まれているのが大きな特色とのことです。

ちなみに長野県中野の15万枚・福岡県久原の9万3,800枚・静岡県北山の3万1,800枚などが発掘されているそうですが、量と種類から志海苔古銭の場合は永楽通宝が無く、洪武通宝が全体の中でわずかに12枚と極めて少ないことから、当時中央の政治勢力が及ばなかった函館で、長い期間に渡り地域の支配力を持って昆布など蝦夷との関係のあった豪商的性格の人物が備蓄したものと考えられているそうです。

それにしても、個人的に大きな謎があります。
当時の「お金」としての価値です。金貨や銀貨なら判りますが時代の変化があっても価値がどれくらいあったのだろう。

古銭についてはまるで詳しくないのですが、少なくても金銀としての値打ちは無い訳です。
もちろん希少価値のあるものもあるでしょうが、素人にとってはヤフオクで「穴銭 まとめて」㎏単位で数千円なんてのもあったりして…。

「志海苔古銭」の、皇宋通宝・元豊通宝・寧元宝・元祐通宝・天聖元宝…。
出土のプレミアは抜きにして、現在の価格といいますか知りたいですね。(笑)

関連記事
スポンサーサイト

COMMENT 0